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CHAOSMOS/冨岡雅寛 (カオスモス/とみおか・まさひろ) 展  

石橋 圭吾/gallery neutron

 

         
 

2006.10.30mon〜11.12sun
gallery neutron

 『CHAOSMOS』(カオスモス)とは、横浜に在住する作家・冨岡雅寛のアーティストネームであり、彼の提唱する科学的アート表現の一貫したコンセプトでもあり、それらの活動・作品を総称する上でのブランドネームとも言える。おそらくは「CHAOS」(カオス)と「COSMOS」(コスモス)を合わせたであろう造語だが、その響きは教科書に登場しそうな程の説得力と、まだテレビゲームも無かった頃に少年達の心を掴んで離さなかった空想科学小説やテレビ番組に近しさも感じる。事実、彼の世代はまさにそういう時代を経てきたのであり、ウルトラマンが一番輝いていた時代であったはずだ。

 それが何の関係がある、と言われそうだが、冨岡を見ているとその表現というか活動そのものがSF(空想科学)と現代アートの産物であり、少年の夢を抜きにしては語れないからだ。彼の制作する立体造形物は「オブジェ」ではなく「マシン」であり、その名前の響きはまさに「超合金」を想起させるではないか。また、彼のマシンは鑑賞者が触ったり動かしたりすることによって変化したり、現象を起こしたりする。それを今風に言えば「インタラクティブ・アート」と呼ぶだろうが、彼はそんな洒落た言い方はしない。「奏作」(そうさ)と言うのだ。これまた、仮面ライダーの「変身」やロボットアニメの「合体」など、一連のヒーロー語を連想せずにはいられないではないか!もちろんそんなルーツを知りもしない今の子供達だって、きっとそんな言葉にワクワクするのは間違いないのである。

 心踊らされるのは名前やフレズだけではない。当然の事ながらCHAOSMOS MACHINE(カオスモス・マシン)こそが雄弁に語る。おおよそ10数年かけて生み出して来たマシンやインスタレーションの数は彼自身も整理できないほどに膨れ上がり、発表も数知れない。しかし共通するのは科学実験の器材のようなオリジナルのマシンを据え、鑑賞者はそれに触れ・動かし、それによって生じる現象を楽しむといった図式だ。つまりマシンだけでは作品として成立しきらず、現象を起こしてこそ完成すると言える。

CHAOSMOSの生み出す現象は視覚・聴覚・及び触覚的なものであるがそれはこの世の科学で証明される事象ばかりだから、発明とも違う。しかしシンプルで且つ美しいそれらを見て・聴いて感じることにより、しかもそれらを美術の現場で行うことにより、視聴覚者の意識は結果的に難解な美術の知識も複雑な科学のそれも必要とすることなく、サイエンスとアートの根源的な部分の結びつきと美の本質に触れる事ができるのだ。

 思えば「カオス理論」及び「フラクタル幾何学」が騒がれだしてからも10年以上、あるいはもっと経つのかも知れないが、私も含めて全世界の人々を驚かせた数学と美の本質的な不可分性はやがて両立場からの研究と制作を生んできたが、冨岡のアプローチもそれを多分に継承したものである。しかし、それだけ(科学と芸術の出会い)で済ませてしまえばCHAOSMOSの魅力の半分も伝えていないことになるだろう。もっと人間臭く、手触りをもって、彼の生み出すマシンは存在する。今回の展覧会ではその代表作とも言えるマシン達がずらりと揃う予定である。ぜひ、見て・触って・感じて頂きたい。

ニュートロン代表 石橋圭吾
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